もう一ヶ月余りになる。
毎日のように会いに来てくれた”訪問者”が姿を見せない。
私はいつの日か、近所に住むこの”訪問者”に好意を抱いていたのである。
少し年は離れていたが、容姿端麗、何より優しかった。
この”訪問者”が最近、私に会いに来てくれない。
最後に逢った時は、いつもと少し雰囲気が違っていた。
悲しげな様子に一抹の不安を抱いた。
”訪問者”が物憂げな表情で言っていた。
「”ボス”がね。最近機嫌が悪くてね。」
「それはそれは普段の”ボス”は人の為に尽力を惜しまない、心優しき人なんです。」
「一生懸命に他人の世話をしたり、気前良く物を上げたりするものだから・・・・」
「実は先日、高熱で倒れてしまいましてね。」
「ところが、いつも良くしてあげた人たちの反応が予想外だったみたいなのです。」
「いざ自分が病気になると、{自分はあの時こうして上げたのに・・・}と思ったに違いない。」
「うーー。そんなものか。そうかもしれない。」と私は頷いた。
「でも、うちの”先生”も病気で倒れたが、そういうことはあまり気にしない人に思われる。」
我が家のカレンダーを思い出した。
[あんなにしてやったのに。{のに}がつくとぐちがでる。]
{のに}がつく人とつかない人の差だろう。
私は好き嫌いが激しいので、どの人にも公平に扱う”先生”は凄いと思った。
「それで”ボス”はあなたに冷たくするんですか。」
「私にはいつもと同じです。」
「いや、もっと優しいかもしれない。」
「それで尚更辛いのですよ。」
「イライラしているのが分かるんです。」
「きっと、愛情の深い人なのかもしれませんね。」
あれからもう1ヶ月、私は恋におちたことを感じた。
年はかなり離れているが、そんなことはどうでもよかった。
逢いたい。
早くまた逢いたい。
”ボス”といっていた人と何かあったのだろうか。
いつか{のに}のことについて教えてあげなければと言っていたが・・・。
もし私がここから抜け出すことができるなら、直ぐにでもあなたに会いに行きたい。
私に自由があるなら・・・。
また今日も黄昏どきにあなたを待つ私。
もし暇があったら私たちの記念写真を見て下さい。