「Titanic」を意識したという「Pearl Harbor」を観た。
監督は「Bad Boy」「The Rock」「Armageddon」のマイケル・ベイである。
35才の新鋭の監督はスティーブン・スピルバーグのデビュー当時を思い浮かばれる。まだ粗削りだが将来は楽しみな監督である。
ところで、この映画は複雑な心の動揺を与えてくれた。
日本人による「真珠湾奇襲攻撃」を扱っているということである。
アメリカ在住の私としては、70、80歳ぐらいの高齢者が映画館の中にいると、何となく気まずい感じがしてしまう。
真珠湾攻撃はアメリカ人にとって最も重大な20世紀の事件なのである。
また、不思議なのは日本の航空機が撃墜される時よりも、アメリカ人が銃撃を受けるシーンに抵抗を覚えてしまう事である。
日本人でもアメリカ人でもない無国籍の人格になってしまったのか複雑な気持ちである。
この映画にはもう一人の監督がいる。
Eric Brevig
「Pearl Harbor」のビィジュアル・エフェクトの監督である。
彼は「Total Recall」では特殊撮影の部門でアカデミー賞をとっている。
今、マイケル・ベイ監督と共に新聞、テレビ等マスコミにひっぱりだこだ。
友人のホーム・パーティーでMr.Eric Brevigに会った。
私は、開口一番、セカンド・ユニット(彼が担当した特殊撮影の班)が作ったところは、最高の出来であることを告げた。
99%の出来栄えであると。
1%のマイナスは、日本の飛行機が立派過ぎる事と速すぎることだ。
「ゴジラ」の米国版が日本版に比べると圧倒的にリアルですばやいように。
戦闘に入る前の映像が、眩しいほど美しい。
ワールド・プレミヤ(ハワイ)に出席した彼はアロハ・シャツ姿で「素晴らしい批評をありがとう。」と言ってワインを飲んだ。
MSNBC(TV)のインタビューに答えていた時にも、数週間前に会った時にもこのアロハ・シャツを着ていた。
私は、「いつもこのアロハ・シャツを着ているのですね。」と冗談を言うと
「そうなんです。一枚しかないものですから。」と笑顔で答えた。
そこへ、日本人の彼の奥さんが「そうなんですよ。買えないものですから・・・」と言いながらアッピタイザーを持ってきてくれた。
数週間前に初めて会った時は、アロハ・シャツと映画のつながりに全く気付かなかった。
子供たちが日本語補習校に通っていて、数人でカープールを始めたばかりであった。
その日はyさんがサン・フランシスコの補習校からご自分のお子さんとブレビックさんと私の子供をピック・アップする日だった。
待ち合わせ場所に30分ぐらい早く着いてしまったので、持参した本を読んでいた。
しばらくして一台の車が駆け込んできた。私の車の反対側に駐車した。
yさんでない事を確認すると、再び本の続きを読み始めた。
するとドアを開ける音がするので、目を前方に向けると男が笑みを浮かべながらこちらに向って来るのである。
Artisan風のこの男はアロハ・シャツにサンダル履きだった。
まさかこの年になっても、”男”に声をかけられるのかと恐ろしくなり、目線をそらすと、その”男”は誰かを捜している様子をしながら、また自分の車に戻って行った。
10分ぐらいすると、子供たちが着いた。
sちゃんがパパと言って駆け出すと、そこにはアロハ・シャツの男が立っていたのである。
私はその時はじめて、彼がブレビック氏であることが分かった。
あまりの驚きと気恥ずかしさで簡単な挨拶をしただけでその場を去ったのである。
多分あの時は私が子供を待っていることを察して、私に近かずいて来たのだろう。
奥さんが来るものと決めていた私はとんだことをしてしまった。
私の彼のイメージはオスカー像を片手にタキシード姿しかなかったのである。
後日、テレビでアロハ・シャツの彼を見て、またパーティーでアロハ・シャツ姿の彼と会ったのである。同じようなシャツを何枚も持っているのだろうが、なんの躊躇いもなく「一枚しかない。」と言えるところが良い。
私はすっかり彼のファンになってしまった。
イタリア料理とワインで映画談義は長く続いた。
勿論、今日の主役は彼だ。
「今度は、全編あなたの監督で作品を作って下さい。」と言うと
「ええ、いつかコメディーを作りたいです。」と眼を輝やせていたのが印象的だった。