Shizuko's
Ceramic Class

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管理人の戯れ言

33.有名人の話 13(ジャック・レモン)
6月27日、ジャック・レモンが癌のため逝去した。
2度のアカデミー賞を受賞した名俳優である。
コメディーもシリアス物もこなす数少ないハリウッド俳優であると共に、ゴルファーとしても有名である。

確か一昨年までは、毎年AT & T プロ・アマ・ゴルフ・トーナメントに招待されていたが、どうしても決勝ラウンドにいけなかった。
「オスカー像を貰うよりも、決勝ラウンドに進みたい」と言ったかどうかは定かではないが、それほどこのトーナメントには執着心が強かった。
そして、皆が彼を応援した。
5、6年前のトーナメントで彼のボールがハザードに落ちた時は、クリント・イーストウッド以下数人の友人が駆け寄り、手と手をつないで崖の下のボールを拾い上げた。
この時も決勝進出は出来なかったが、映画と同じように輝いていたのを憶えている。

マリリン・モンロー、トニー・カーティスと共演した「お熱いのがお好き」(Some Like It Hot)は私の好みの作品の一つである。ビリー・ワイルダー監督の演出もさることながら、ジャック・レモンの演技は絶妙である。
それは多分に彼のインテリジェンスによるところが多い。
彼のような演技が出来る俳優は今のハリウッドにはケビン・スペイシーぐらしかいないだろう。

ところで、ジャック・レモンと会った事はないが、2度ほどサン・フランシスコの街角で見かけた事がある。
舞台出演のため長期滞在していたためだろう。
その2度ともショー・ウィンドーをゆっくりと眺めていたのを憶えている。
ポスト通りにあるグッチ店の前に立ち止まり、背を丸めてショー・ウィンドーを眺めていたのである。
私は2メートルぐらい横を彼とすれ違い、一瞬を楽しんだ。
当時のポスト通りはロデオ通りに匹敵する活気があった。
もう一度は当時勤務していたブティックであった。
ショー・ウィンドーを、覗くように観ていた時には驚いたものである。
こちらは観ていないのだが、我々を観てくれているような錯覚を覚えた。
彼はというと我々のざわめきなど気にするまでもなく、ディスプレーを一心不乱に眺めていたのである。
ただの時間潰しともいえるが、物をしっかりと見るということは、たぐいまれない観察眼が身について、何等かの形で演技に還元している事だろう。

ショー・ウィンドーのディスプレイだけでなく店の中も覗いていた紳士がいた。
今は亡きハーブ・ケインである。
サン・フランシスコ・クロニカル紙のコラムニストとして有名な氏はオープンしたばかりのこの店についてこう書いた。
「サン・フランシスコにハンサムな店がオープンした。しかし、私は店の中にお客を見たことがない。」と。
その記事に感謝をこめてサンキュー・カードとネクタイを送ったのだが、その後、お客が入っている時に見たかどうかは分からない。

ジャック・レモンには客の入り具合はどうでも良かったに違いない。
客の動向など経済的な観念に興味はなかっただろう。
物の善し悪しは、磨きかけられた自分の眼で見極められるのだから。
ショー・ウィンドーのディスプレイは映画のスクリーンに似ている。
フレームごとに完璧な構図を決めていくのである。
ポスト通りはハリウッド映画にはならないが、フランス、イタリア、イギリスなど各国のエッセンスが混じったヨーロッパ映画だ。
ジャック・レモンは一種ヌーベルバーグ的な(この映画)を十分楽しんだに違いない。

2001年7月12日


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