Shizuko's
Ceramic Class

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管理人の戯れ言

37.ジェームス・ディーンと甘い誘惑
私は太平洋に面した1号線をドライブしている。
誰もいない海岸沿いを突っ走るのは爽やかだ。
午後の西日に光る海と一艘の小船がキラキラして美しい。
そんな風景に見とれていると、すぐヘアピン・カーブにさしかかる。
ブレーキの音が波の音を打ち消す。
何度目かの左カーブで誘惑にかられる。
このまま直進したら、何と爽快なダイビングになることだろう。
普通の人は、恐怖感と激痛を伴うと想像するだろうが、本当はそうではない。
爽快感と虚無感とが混ざり合う。
痛みなど一切ない。

数週間前、テレビ(TNT)でマーク・ライデル監督の「James Dean」を観た。
テレビ用の映画だが「猿の惑星」「ジュラスティック・パーク3」と睡魔が襲いそうな映画を見ていた私にとっては、意外な佳作に出くわしたのである。

実の父親でなかったことを告白する”父親”の改悛。
その懺悔を受け入れる、ジェームス・ディーン。
何故、父親は自分を愛してくれなかったのか。
その真実が分かった時、一切の呪縛から解き放された。
その”父親”を許した。
中止していた「Giants」の撮影にふたたび参加することにする。
そして,その撮影現場から自分のスポーツカーをドライブして事故死するのである。
砂漠の中を粉塵をかきけらし駁そうする車。
砂漠の中の交差点、前方から車。
手信号で左折を表示。
ジェームス・ディーンは誘われるかのように、右折する。
ブレーキを踏むが右折した彼の車は、対向車に激突する。
ジェームス・ディーンは砂漠の砂塵に永遠に消えた。

ジェームス・ディーンは真実がわかり、不信の呪縛から解き放された時、 ”父親”の苦悩を理解したが、同時に”父親”を失った。
ジェームス・ディーンの棺を受け取りに来たのは”父親”だった。
棺と対面する”父親”。
遠景でとらえるラスト・シーンが印象的である。 本当の親子になった二人の瞬間でもあった。

突然、光に照り付けられた青い海が、眼に飛び込んできた。
私はハンドルを大きく左にきった。
ガードレール寸前で衝突から回避した。
次の瞬間、シルバー・メタリックのスポーツ・カーが、私の車すれすれに駆け抜けていった。
ナンバープレートは[JAMES.DEAN]
バック・ミラーを覗いても、その車はもう砂埃の中に消えていた。

「夏の甘い誘惑」だった。

2001年8月26日


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