久しぶりに有名人の話でも書こうかと思ったが、誰にするか決まらない。
今は、明るい話も楽しい話も考えつかない。
そこで、死に直面した私のにがい苦しい経験を紹介することにした。
ここはサン・フランシスコのある高層ビル。
事件はこのエレベーターの一室で起きたのである。
エレベーターを待つ人が既に数人いた。
ボタンダウンのシャツにレジメンタル・タイの中年紳士。
オフ・ホワイトのシルク・シャツに黒のスーツを着たプラチナブロンドのキャリア・ウーマン。
チャイニーズの若いカップル。
エレベーターが着くと、私は最後に乗り込んが、突然UPSの男が待ってくれるよう叫んだ。
UPSの男の荷物でエレベーターは一杯になった。
5階、20階、25階のランプがつき、そして、私が38階のボタンを押した。
5階で若いカップルが降りた。
20階で陽気なUPSの男、中年紳士、そして最後に奥からプラチナ・ブロンドの女性が降りた。
入れ替わりに、若い女性3人が入ってきた。
女性の一人が41階のボタンを押した。
私は「誰が25階のボタンを押したのだろう。」と思うや否や、凄まじい異臭にすぐ気がついた。
この臭いが何であるかは明らかだった。
「この密室で誰がしたんだ。」
「この3人の女性ではないのは確かだ。」
ドアサイドから奥の方に移動していた私には、3人の女性の表情が良く見れた。
笑いから怒り。 怒りから軽蔑。
私は次の階で降りるべきだったが、金縛りにでもなったかのように、私は「俺じゃない。
俺じゃない。」と頭の中で繰り返すだけだった。
38階で降りると、閉まるドアの中から笑い声が聞こえてきた。
臭さと恥ずかしさで、本当に死ぬかと思った。
まさか”あのプラチナ・ブロンド”
まさか・・・・・・・・。
ありえない・・・・・・。
むむむ・・・・・・・・。
兎に角、臭かった。
2001年10月14日
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