今年の「父の日」も素晴らしい日となった。
「第三回作品発表会と昼食会」がこの日に開催されたからである。
”先生”がこの日しかなく已む無く選んだ日なのだが、少なくとも私にとってはいい日であった。
父親である男性にとっては、参加した人もしなかった人もこの日の会を不愉快だったかもしれないが・・・
多くの方が「どうして「父の日」に」と思ったに違いない。
私にとっては、いつもお世話になっている皆さんに、多少の奉仕をするのは嬉しい限りであった。
そして、バーベキューのスモークに悪戦苦戦している私に、小さな声で「A Happy Father's Day」と言って、手伝ってくれた子供たちのお陰で、皆さん以上に楽しませてもらったわけである。
ところで、私の「父の日」は四日前にもあった。
ミュージカル「レ・ミゼラブル」を上の娘と”先生”の三人で観に行ったのである。
3オクターブはこなせるジャン・バルジャン役の役者は素晴らしく、特に追手のインスペクターとのやり取りは圧巻であった。
娘は当初、私と二人で行くことを考えていたのだが、私は嬉しさと怖さが入り混じった心境であった。
私は娘に言った。
「お母さんに一緒に行きたいか聞いたほうがいいよ」
「お父さんは嬉しいが、お母さんも一緒に行った方がいいと思う」
「兎に角、後が怖いからね」
「一生、見せてもらえなかったと言うに決まっているからね」と。
こうした経過で娘は”先生”(母親)を誘ったわけで、”先生”は自腹で我々と一緒に「レ・ミゼラブル」を観劇することになったのである。
私は満面の笑みを浮かべて劇場を出る”先生”を見て、改めて一緒に観れたことを感謝した。
”先生”は帰りがけに見かけた人を見ては「ガン・バルジャン」と言ってご満悦であった。
その日、家路に着いたのは1時を回っていた。
私は急いでシャワーを浴び、ソワァーに寛いでいるとお腹がすいてきたので、
ほんの少し残っていた二日前のパスタを食べた。
そこにシャワーから出てきた”先生”が台所に入っていった。
すると”先生”の悲しい叫び声が聞こえてきた。
「食べようと思っていたのに・・・」
「何故、聞いてくれないの・・・」
「自分だけ食べて・・・」
「自分勝手ね・・・」
「あなたに優しさというものはあるの・・・」
「あなたには愛情のかけらもないの・・・」
今まで古いものを食べたことのない”先生”なので、二日前のパスタを私は何の躊躇もなく食べてしまったのである。
他にも食べるものがあると思うのだが、延々と慟哭の叫びが台所から聞こえてきた。
私は息を殺してリビング・ルームを後にした。
「ああー無情」