Shizuko's Ceramic Class

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管理人の戯れ言

59.有名人の話17(ジョージ・ルーカス監督)

「有名人の話」は古い話が多いのだが、今日は最近の話をしましょう。
時は先月の10日水曜日の朝、場所はSan Anselmoにある「Dipsea Cafe」
朝から日差しが眩しい程の日だった。
”先生”と私は久しぶりに朝食を外で食べることにした。
私は以前から行きたい店があった。
特別なレストランではないが、朝食にはもってこいの老舗の支店である。 Mill Valleyにある「Dipsea Cafe」の支店がSan Anselmoにオープンしていたのである。
工事中の時から完成したら食べに来ようと思っていたのですぐ決めることが出来た。

我々が店に入ると八割ぐらいのお客が入っていた。
ウエイトレスに好きなところに座っても良いと言われ、店中を見渡すと子供ずれの主婦がこちらに向かって手を振っていた。誰に向かって手を振っていたのかは分からなく困惑したが、ウエイトレスは我々の方にはいなかったのである。
そのファミリーの円形テーブルの左のブースの一つが空いていたが、我々は奥に入るのを躊躇い、立っていた目の前の窓際のブースに席をとった。
そして、座るやいなや私の45度の角度にあの「スカイ・ウォーカー」の生みの親を発見した。
先ほどまで新聞で顔が見えなかったのだが、「ジョージ・ルーカス」が一番奥のブースにいたのである。
朝食は終わっていた。コーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。ひとりだった。
顔中を覆うグレイの入ったひげがマスコミでみるのと同じだ。
ジョージ・ルーカスがいることを”先生”に告げると彼女は体を捻って彼の方を見た。
私は眼を動かすだけで見れたが、”先生”にとっては大変だったのである。
「サイン、サイン」と叫んだ。私は有名人からサインをせがんだ事はない。(本当は一度だけあるので、いつかそのことはこの稿で書くことにします。)
私はサインを貰いたいと思ったことがないし、「サイン、サイン」と言っている”先生”も言うだけで行くつもりはないらしい。
店に入ったときは、ジョージ・ルーカスの隣のファミリーが賑やかであったが、他の客はいたっておとなしかった。この店に世界的な監督がいるという雰囲気はなかった。従業員もお客も無関心だった。(無関心を装っていたのかもしれないが・・・)
私はジョージ・ルーカスを良く知っている人の話を思い出した。

その彼は嘆いていた。
彼のもとには多くの人が一緒に働きたいと集まってくるが、彼のケチぶりには呆れてしまうそうである。
普通、映画のロケなどでは飲み物などがスタッフにも振舞われるのだが、彼の現場では自前で買わなければならないそうである。
勿論、彼のもとにはコークもコーヒーのサービスも至れり尽くせりだそうである。
その人は「自分の”おもちゃ”(車)には相当なお金を使うのに、彼の下で働いている我々には飲み物一つ出してくれない。」と嘆いていたのである。
また、「多くの人が飲み物一つより、彼のもとで働ける方が得であり、何よりも喜びだったのだろう」「そして、ジョージ自身がその事を知っていたに違いない」とも言っていた。

新聞を読み終えると、コーヒー・カップに手をかけた。入っていないことに気づいた彼はそのまま席を立ち、出口に向かった。
驚いたことにキャッシャーで立ち止まった。
ウエイトレスを介して精算せず、自らキャッシャーに来たからである。我々が入ってから一度もウエイトレスは彼のテーブルに寄らなかったし、彼も呼ぶことをしなかった。

わずか数メートルの距離にジョージ・ルーカスがいた。
背丈はあまり高くなく、何より足が短かった。 シルキーな軽い素材のブルーのシャツにブルージーンズ。黄色がかったライト・ブラウンのベルトが良いアクセントをつけていたが、履き過ぎの感が否めないナイキのウォーキング・シューズが億万長者の彼には相応しくなかった。

「彼はケチでね・・・」という知人の言葉を思い出した。 私は「チップはどのくらい置いていったのだろうか?」と想像したが分かるはずもなかった。 キャッシャーで応対したオーナーらしき女性の顔に、何ら変化もなかった。
常連客に対する笑顔もなかった。出て行った後もみんな淡々としているのが不思議でならなかった。
追いかけて”おもちゃ”を見たかったが、席を離れる訳にはいかなかった。
私の目の前にあるオムレツと”先生”から貰ったパンケーキが眼前に立ちはだかっていたからである。

食事を終えて、レストランの駐車場を見渡したが、当然のように”おもちゃ”の姿かたちもなかった。 家を買えるほどの”おもちゃ”で来たかどうかも分からないのだが、私は二人で始めて遭遇した有名人の残像を思い巡らした。
そして、私の履き過ぎの感が否めないナイキのウオーキング・シューズから、眼を離して”先生”に言った。

「いい思い出になったね」と。

8月13日2002年


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