Shizuko's Ceramic Class

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管理人の戯れ言

73.愛されて(映画:Adaptaionを観て)

  近頃”先生”は私を「愛してる、愛してる」と言う。 何とも嬉しいことではないか。私は間違いなく愛されていたのです。

 そんな時、『愛してる』という言葉が印象的に描写された映画を観た。 毎日のように『愛してる』と言われている私だけが感じたことかもしれないが、この作品のテーマを観たような気がしたのである。

 作品:「Adaptaion」
 監督:スパイク・ジョンズ 
 脚本:カフマン兄弟
 主演:ニコラス・ケイジ
 共演:メリル・ストリープ

 この映画は「Being John Marchobich」の続編というが全く別の作品である。 監督と脚本家が同じだけだ。 アーティストとアルチザンの妙を融合した味を出した監督スパイク・ジョンズ。 類い稀な才能を発揮した脚本家カフマン兄弟。 最高の演技をしたニコラス・ケイジ。 まだまだ若いヒヨッコには負けないことを示したメリル・ストリープ。

 この作品の主役は「Being John Malkovich」の脚本家Charlieである。 この脚本家が「The Orchid Thief」という本を脚色することがこの作品のストーリーなのです。 タイトルの「Adaptation」はここからきているのです。 脚本家の実生活と映画が同時進行するこの映画は私たちを不可思議な世界にいざなってくれる。 その点では前作の「Being John Malkovich」と同じだ。

 主人公である脚本家Charlieは単調なこの本の脚色に苦労するのだが、ここで忘れてはならないのが双子の兄弟Donaldである。 全く相反した性格の双子の兄弟。 主人公のCharlieは好きな女性にどのようにして愛の表現をして良いのかわからない。内気な彼は仕事の面でもスムースに運ぶことが出来ない。 そんな彼を助けるのが双子の兄弟Donaldである。

 紆余曲折した後、ランという花泥棒を描いた単調な本が、ハリウッド映画のようにエキサイティングな展開をするのである。これはハリウッドに対する脚本家のアイロニーだろう。

 双子の兄弟Donaldは映画の終盤に死んでしまうのだが、その直前、Charlieに言う。 『愛されるのではなく、愛さなければならない』ことを。 そして最後に主人公の脚本家Charlieは他の男に去ってしまった女性に言うのである。 『愛してる』と。 主人公のCharlieはそれだけで満足だった。 彼は彼女が戻ってくることはないと知っていた。以前のような不安は彼を支配しなかった。 それは初めて自ら愛の表現が出来たからだった。

 余談であるが、ここに出た主人公の双子の兄弟Donaldは現実に存在したものだろうか?主人公の幻想だったのだろうか?イントロに出てくる兄弟Donaldはお腹が大きくあまり身動きが出来ない。あたかもグレゴール・ザムザのようであった。この脚本家はカフカを愛し二重人格(もしくは多重人格)に興味をもっているに違いない。

 ところで、”先生”の私に対する愛情は凄い。
「愛しているから、夕食作ってくれる」
「愛しているから、デザート作ってくれる」
「愛しているから、掃除してくれる」

 このように私は相当愛されているのです。
 私も愛さなければならないと思い、なれない言葉だが近くにいた”先生”に向かって言った。
「愛しているから、お茶下さい」
 素早く返事がきた。
「あなたは口先だけなのよ。真実味がないの。これからあなたのことを口先男と呼ぶわ。・・・そうね・・・お茶もいいわね。『愛している』から、私にもお茶を下さい。一緒に飲みましょう」

 お茶を汲みながら、慣れない言葉は使うものではないことを肝に銘じた。

2月9日2003年


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