Shizuko's Ceramic Class

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管理人の戯れ言

88.世代交代

   数ヶ月前のことだが、有名な中華料理店があるというので数人の知人と昼食を共にした。

 サン・マテオの「Koi Palace」というレストランだが、朝の11時だというのに列が 出来るほどだった。受付では若い女の子がテキパキとお客をさばいていた。
 ここの飲茶のメニューはなかなか新鮮である。材料だけでなく内容がバラエティー に富んでいて美味しかった。
 私は中華料理のニューウエーブを感じると共に、コックやオーナーの世代交代を印象づけ られた。 この店はサン・フランシスコにある中華料理店の「東江」とベトナム料理店の「Thang Long」 に行った時を思い出させた。

 飲茶で有名な「東江」は、昔は中国人の家族で賑わう普通のレストランだった。 実はこの店も”先生”が会員の方から紹介されたのだが、彼女は名前を忘れていて大体の場所だけ を知っていただけだった。
 私は「東江」という看板を見て、大きな驚きを覚えたのを今でも忘れられない。 サン・フランシスコで働いているときは、中国人の知人と何度か着た店だったからである。  今ではパシフィッツ・ハイツやシークリフなどから来るお客が多いのか、身なりの良い人が目立つ。  その日、隣のテーブルにはベルサーチの革のジャンパーの男、イブ・サン・ローランが好むカラフルな ワンピース・ドレスの妻、ブルックス・ブラザースの紺のジャケットにラルフ・ローレンの 水色のボタンダウン・シャツを着た息子と白髪の老夫妻がいたのである。
 まわりを見渡しても満員のお客の中に中国人はいなかった。不思議な感じがした。 「Tommy Toy」で食事をしているようだった。 がさつな私にはこの高級感が合わなかったのかもしれない。
 ダークなピン・ストライプのパンツ・スーツを粋に着こなした、 アクセントのない完璧な英語で話す女性の声を聞きながら 、この店の変化と時代の経過を身に沁みた。

 一方、ベトナム料理店の「Thang Long」は「蟹」で有名な店である。昔は、 汚い店の中にもフレンチの香りが漂っていた。
 食事が終わると、必ず頭が薄くなった店のオーナーが請求書を持ってきて、 支払うまでそばで立っていた。何度となくこの店に行ったが彼は一言も話さなかったように思う。
 二、三年前に久しぶりに行ったら、店も拡張し内装も変わっていた。 値段もローストクラブは時価(もう二度と来れないと思った)に変わっていたのである。

 以前は娘や息子(孫?)が応対していたが、今回は従業員風の女性が切り盛りしていた。 昔は薄汚れた壁にゴキブリがよく徘徊していたが、もう出てこれる雰囲気ではなかった。 そして、必ず請求書を持ってきた店のオーナーは食事が終わってもついに現れなかった。

 味だけは唯一変わらなかったが、世代交代の波は私を過去に追いやり寂しさだけが残った。

4月20日2004年


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