娘は『オカマ』と言う言葉に魅せられている。
日本語放送の番組から覚えたようだが、「オカマみたい」と私に向かって言われると、
男っぽいと自負する私にとっては甚だ心外である。
幸せそうな笑顔をすると「オカマっぽい」という言うのであるから、私はいつも不機嫌
でいなければならないのだろうか。
ここアメリカの一部の州では同性愛同士の結婚が認められ始めている。私の住むベイエリアの
サンフランシスコ市でも認可されたので、市庁舎には結婚届をする同性愛のカップルが大勢
駆け込んだ。
古代から現代まで延々と同性愛は存在するわけであるから今更驚くことはないだろうが、
法的な後ろ盾ができたことは同性愛者同士にとっては嬉しいことだろう。
随分昔のことだが、私は学生の頃、電車や映画館で『襲われた』ことがある。いずれの時も
サラリーマン風の中年の男だった。背後に立っている男の手がお尻から股座に忍び込んできたのである
。即座に振り向き不快感をあらわにすると簡単に退治することはできたが、不愉快な一日になったのは
言うまでもない。
子供に対する性犯罪が急増して社会問題になっている。
同性異性を問わず、本人の意思に反することは何とも迷惑至極である。意思表示を明確に出来ない
幼児に対する悪戯は子を持つ親としてはなおさら許しがたいことである。
ところで、第77回アカデミー賞の中継を見ながら、オーランドー・ブルームが大好きな”先生”が
私に聞いた。
「誰が好きなの?」
「ダン・チードルが好みだがジェミー・フォックスになるだろう」
と即座に答えた。すると、
「そういう意味じゃなくて。誰が貴方の好みか聞いてるのよ」
私の頭には直ぐに”先生”のことが浮かんだが、『がつーん』とやられそうなので言葉にはしな
かった。
「マルコビッチ、ベニ・トロ、オールドマン、それと演技はそれほどではないがリチャード・ギア
はなんとなく好みだが・・・」
「何を言っているのよ。女優では好きな人はいないの?」
私は懸命に女優の名前を探したがなかなか浮かんでこなかった。
テレビの音も消えたかのように静寂があたりを支配した。
そして、傍にいた娘が思いを込めて言った。
「やっぱりね・・・」